《調香師の香水手帖》
"Hong Kong''23"
湿度が高いこの時期になると、香港が恋しくなる。
まだイギリス領で究極のパラダイスだった1990年頃、
僕は物理学者夫婦と仕事や旅行でシーズンごとに香港を訪れていた。
優雅に広東料理を食べながら、その学者夫婦に色々教えていただいた。
内股なのにガニ股な僕の歩き方の修正や、漢方の事。
農薬・防腐剤を使っていない新鮮な野菜の事、
レストランでのメニューの選び方など、
物理的な考えになるように教育していただいた。
まだ勉強をしていなかった僕の空っぽな脳は、
クリエイティブな事に反応しどんどん吸収していった。
真似でなく想像して作りあげる力がついた。
九龍半島にあったザ・リージェント香港B1のカフェは、
朝6時からやっていて、ハーバービューを見ながらの朝食は抜群だった。
ココナッツジュースは、ココナッツに穴をあけてストローで飲む。
パパイヤはモスリンコットンで包まれていてライムを絞って食べる。
フレッシュサーモンマフィンに半熟卵、ハニーとヨーグルトを平らげた。
その後はアールグレイとミルクを楽しんだ。今でも、美味しい食事が忘れられない。
そして、もうひとつ忘れられないのが白いジンジャーリリーの香りだ。
香港の街角で売ってるのを見つけないと嗅げない香りである。
白いジンジャーリリーの香りは、トップノートがフレッシュベルガモットと
一瞬くるぺパーミントグリーンウィンノートから始まるホワイトフローラル。
ジャスミンサンバック&エジプトジャスミンハートに。
ラスティングは、サンダルウッド、アンバーグリスの上品で色っぽい香りである。
それを香水で作るとOrganic BERGAMOT、YLANG YLANG、GALBANUM HEART、
VIOLET LEAF、JASMINE SAMBACK、Organic JASMINE、TUBEROSE Absolute、
SANDALWOOD、ROSEWOOD、CEDARWOOD ATLAS、
PATCHOULI HEART などで作り上げた。
今はなきブリティッシュ香港に想いこめて…。
贅沢な色っぽい香り旅をお楽しみください。
まこと虫
